9月2日の公正取引委員会コンビニ調査報告について(声明)

9月2日の公正取引委員会コンビニ調査報告について(声明)

2020年9月8日 0 投稿者: konbiniworker

(1)今回の公正取引委員会の報告書は、公取委のなかの経済取引局という部署が独占禁止法違反の取引の未然防止という観点からどのような取引行為が違反になるかを示すために出したもので、コンビニ関連ユニオンが昨年9月から呼び掛けて継続してきた独占禁止法違反の申告に対して公取委の審査局という部署が結論をだしたものではありません。
 審査局はユニオン呼び掛けの申告に対しては「調査中」としか回答していませんが、要件を満たした申告には法に基づいて文書でどういう措置をとったか、とらなかったかも通知することになっていますので、いずれ、排除命令とか課徴金という結論が出る可能性は高いです。
 今回の報告書の判断を前提にすれば、ユニオン呼び掛けの申告には排除命令という措置がとられないとおかしいです。
 ただ、昨年9月から、毎月11日、ドミナントで自殺に追い込まれたセブンイレブン東日本橋一丁目店オーナーの月命日に継続的に行ってきた申告は、毎回メディアに情報提供したこともあって、ひとつの社会的世論をつくりだし、今回の公取委の報告書に大きく影響したと言っても手前みそということでもないと思う。
 報告書は、公取委としてははじめての大規模調査としておこなわれ、契約前の情報開示、無断発注含む仕入れ量強制、年中無休・24時間営業強制、ドミナント、といったコンビニ関連ユニオンが申告で問題にした課題に踏み込んで判断しており、公取委の歴史としてはちょっと「画期的」とも言えるものだと思う。

(2)コンビニ関連ユニオンとしては、コンビニの契約は、地主と小作のような関係と評価しているが、報告書では、「加盟店からみた本部のイメージ」という質問に、「親会社」というのが一番多く43.3%あったとされているのだが、その他6.6%には「支配者と奴隷/悪代官/押し売り商社/上納金徴収する組織/ヤクザ/パワハラ上司/鵜飼と鵜」とオーナーが記述していたと書かれていて思わず笑ってしまった。一部のコンビニ本部は「反社」と言っていい実態です。
 それはともかく、報告書の概要を紹介すると、年中無休・24時間については、「辛い」が32.5%、「非常に辛い」が30.2%で6割超。深夜営業の採算は、「赤字である」が77.1%。実に8割が赤字だ。バイトの人数についての認識アンケートには、「少しでも辞められたら不足する」が47.8%、「不足している」が45.7%。「足りている」は6.4%しかない。求人しても応募がない理由は、「覚えなければならない業務が多くコンビニは大変というイメージがある」が32.2%、「魅力ある時給が提示できないから」が23.2%。
 厚労省の大学生への意識調査で「採用時と違うシフト入れられた」「商品の買い取りを強要された」がコンビニは異様に多いこと、東京労働局の調査で95.5%のコンビニで労働法違反が見つかっており、これらも人手不足の理由と報告書は指摘している。公取委がこのような援護論を書くのもめずらしい。
 「時短に切り替えたい、時短を実験したい、24時間には戻らない」は計66.8%で、7割のオーナーが24時間義務化廃止!を主張している。
 24時間辞めたい理由は、「採算取れない時間にやりたくない」36.3、「バイトが集まらない」23.8、「休めず疲労が限界」21.1%。と限界越えてるデータが出ている。
 自由記述には、「子育てするようになって、夜も突然電話が鳴ったりする恐怖に耐えられない」という声がある。
 オーナーヘルプ制度があると言われているが、コンビニ関連ユニオンとしても昨年はヘルプ制度が機能してない、欺瞞だということを相当宣伝したが、この箇所の自由記述には、実に多くのオーナーが書き込んでいる。
 「(二週間前に申請しろというが)家族の死期など分かるはずない」「地方は対象外と断られた」「派遣社員は時給高過ぎなのに店に立てるレベルじゃない」、「父の葬儀の日もレジ打ってた、娘の結婚式に出られなかった、子どもが亡くなったときも使えなかった、ガンで入院し退院した日から深夜勤務に入った、義理の両親の葬儀に参列できなかった……」。葬儀にも出られなかったオーナーたちの本部への怒りはうっ積している。
 現在、本部は、時短は自由のようにメディアに広報しているが、実態は違う。本部幹部は、いまも「あの時短店舗をつぶせ!24時間にもどせ!」と怒鳴っているのが現実だ。それが報告にも現れている。
 時短希望を本部に伝えたオーナーが43.8%、しかし33.5%が交渉に応じてもらえていない。
24時間が社会問題化したあと各本部が公表した改善策について、そもそも「説明されてない」が53.5%、本部は変わったかに「特に変化はない」が75.2%️「良くなった」は2割だ。
 自由記述は、「報道内容と実際の店舗での対応が違う/ただのパフォーマンス/本部案内よりニュースのほうが早く、指導員は私は聞いてないという……」とあり、実態が赤裸々に報告された。
 ユニオンとしては、24時間義務化廃止を中心課題として闘ってきたが、7・11スト以後、セブンもファミマもローソンも「オーナーの自由です」と言ってごまかしの施策をメディアに公表してきた。我々は、これは公取委を騙す意図だと考えてきたが、大規模アンケートによって、本部のごまかしが通じなくなった。
 今回の報告書の特徴は、「最近の諸論点①年中無休・24時間影響」「同②ドミナント出店」、という2つの章を立てて踏み込んだことだが、①の章を前述のように最後まで読むと、①冒頭の「時短が認められることになっているにもかかわらず、本部がその地位を利用して協議を一方的に拒絶し、加盟者に不当利益を与える場合は優越的地位の濫用にあたりうる」としたこの報告書の意義がはっきりする。昨年の攻防で、年中無休24時間をガンガン批判しストを含めて闘った結果、本部はごまかしに「時短は自由」と言わざるを得なくなったが、報告書は「実態は変わってない」と暴露して、「協議を拒否するなら違法だ」と言い切った!これは大きい。
(3)報告書は②でドミナントにも踏み込んだ。我々が斎藤敏雄さんの自殺に抗議し彼の月命日に集団申告をしたのは無駄ではなかった!従来は「ドミナントしないと約束してなければドミナントは経営の自由」という扱いだった。今回はちがう。報告書は「(1)欺瞞的顧客誘引の観点から」の項をたてて、「募集時に」ドミナントがありうることについて「十分開示せず誤認させ」たり、ドミナントについて「配慮するつもりがないのに、配慮すると説明することにより、誤認させた場合」も欺瞞的顧客誘引に該当しうる、と踏み込んだ。
 また、「(2)優越的地位の濫用の観点から」の項を立てて、ドミナントに配慮すると定めた上で、加盟前の説明において何らかの支援を行うことや一定の圏内には出店しないと約束したのに反故にし、「一切の支援を行わなかったり、一方的な出店をした場合は優越的地位の濫用にあたりうる」とした。テリトリー権を設定しているチェーンもあることから、オーナーに契約時に考慮事項に選択してほしい旨を書いているのも公取委職員の思いが伝わる気がする。
 追加出店で影響はあったかの質問に87.7%のオーナーが日販が減ったと回答。本部から配慮を受けたかの質問に、「本部からは何も提案されなかった」オーナーが62.3%。

(4)報告書は、最終章の「調査結果に対する評価と対応」で独占禁止法上の評価を示している。これは現場で活用できる。全国のオーナーさんは、この最終章を熟読して、本部担当員や本部幹部との協議に活用してほしい。学習会をして理論武装して臨むことが大事だ。ユニオンも全力でバックアップしたい。

(1)加盟募集時の説明ー欺瞞的顧客誘引の観点から

 予想収益の説明で、「来客数が過大に見積もられていた」が63.3%、「人件費が過小に見積もられていた」が47%、「廃棄ロスが過小に見積もられていた」が43.8%あり、この問題について、報告書ははじめて踏み込んで、「本部は類似した既存店舗の実績など根拠ある事実、合理的な算定方法などを示す必要があり、さらにリスク情報やオーナーの負担となる費用の情報をしめすなど加盟希望者が適切な判断ができるよう丁寧な説明が望まれる」と報告書は書いている。
 加盟店募集のときにうまいことを言って騙して契約させ、あとで実際と違うと気がついても知らん顔されたオーナーは多いが、この問題に言及したのは大きい。本部がはたすべき責務をやらないことも該当しうるといえる。法違反とまで言い切れなくても、交渉においては使える記述だ。

(2)加盟後の取引ー優越的地位の濫用の観点から

 ここでは51.1%のオーナーが経験があると回答した仕入れ数量の強制(無断発注含む)、見切り販売、コンビニ会計を取り上げている。


■報告書は、仕入れ数量のテーマに入る前に、「本部の取引上の地位」という前置き的節を儲けている。かなり重要な項目だ。ここにも公取委の踏み込みが見られる。
 アンケートで不当な要求を受け入れている理由を尋ねたところ「本部に逆らうと契約更新などで不利益が生じるのではないかと思ったから 」が多いこと、本部に自分から本部とちがった意見を言えないのは「本部にしたがうまで何度も説得される」61.1%などのデータをあげて、「不利益でも受け入れざるをえない本部の優越は多いと考えられる」と、実態において独占禁止法違反が多いのではないか、という趣旨の評価をしている。こんなくだりは過去の公取委ではなかったことだ。
 たしかに、本部に公然と反乱をおこしているオーナーは決して多くはない。だが、同じ思いのオーナーが実に多い。そこには、声をあげられないようにしている「有形無形の強制」があるのだが、それ自体を、報告書は「優越的地位の濫用」の可能性ありとしたのだ。声あげられず悔しい思いをしているオーナーさんは、匿名でもいいから、声をあげにくくしている「仕組み」をぜひユニオンに報告してください。「言いたいことが言えない」壁をつきくずしましょう。一人では声あげられなくても、団結すれば大きな声にしていくとはできます。

■その上で無断発注含む仕入れの強制は51.1%があると回答しており、これは優越的地位の濫用になりうると明言。昨年、おでんなどの無断発注を社会問題にした効果があった。この問題ではコンビニ本部に直ちに点検と改善を求めるとし、自爆営業との絡みも指摘している。この問題では、文句なく本部を弾劾し、責任者を処分させることは可能だ。そこから裁量権をオーナーが取り戻すことも可能だ。

■次に見切り販売では、「見切りは可能だがほとんどの店舗で行えない状態」というアンケート回答を示して、「本部はオーナーの見切りを制限しないように改善しないと優越的地位の濫用になりうる」とした。見切りはあまりなされていないのは、本部ができないようにしているからだと認定したのだ。この条項を生かしてガンガン見切りをやり、そのデーターを、ユニオンに集中して公表しよう。そうすれば本部の「見切りは利益になりません」という嘘のアドバイスを粉砕することができる。

■コンビニ会計については、「仕入れの強制や廃棄ロスの増加を内包するから、独占禁止法上の問題が生じないよう留意すべき」、と初めて会計問題を俎上に載せた。なかなか会計システムそのものを問題にしてくことは難しいし、オーナーも勉強しないといけないが、仕入れ強制と廃棄ロスの強制と結びつければ、突き崩す可能性はでてくるのではないか。

■年中無休24時間については、時短を希望しているオーナーの8.7%が「交渉を拒否されている」と回答しており、報告書は、この実態が欺瞞的顧客誘引に該当しうるし、「本部が一方的に協議を拒絶し不利益を与えていれば優越的地位の濫用に該当しうる」と言い切った。
 ここがメディアが、大きくとりあげた箇所だ。
 しかも、この箇所の最後に「時短の協議要請があった場合丁寧な対応を行う必要がありコロナ対応も含め特に留意すべき」と付け加えている。
 コロナが売り上げが減っており、赤字垂れ流しの深夜営業をやめたい欲求は高まっている。この条項をいかしきって、「時短交渉を要求し、拒絶されたり、丁寧でない対応をされた場合は、即刻公取委に違反申告をする、もしくは違反申告をすることを背景にして交渉する、場合によればユニオンと一緒に集団申告も辞さない!として交渉する」というやり方が可能だ。

■ドミナントについては、「ドミナントがあり得、かつその影響があることを十分開示せず誤認させたら欺瞞的顧客誘引に該当しうる」と認定した。
 また、テリトリー権が設定されているのに反故にしたり、「実際には配慮するつもりがないのに、配慮すると説明し誤認させた場合」も欺瞞的顧客誘引に該当しうると認定した。個別の内容にもよるが、十分争うことも可能になる。優越的地位の濫用にも該当すると認定した。
 たとえば、「道路の反対側なので動線が違うので影響は少ないです」と言ってドミナントを了解させたのに、開店してみたら道路の同じ側だった、というな例では、売り上げ減少分を補填しろと要求することも可能ではないか。

■公正取引委員会は、各本部に報告書の内容を伝え、直ちに自主的に点検改善し、結果を11月末までに報告するよう要請した。「結果は公表が望ましく、今回の結果を踏まえてガイドラインの改正を行う、今後も情報収集に務め違反行為には厳正に対処する。」と結んでいる。
 つまり、本部が本気になって実際に具体的な改善を11月末までに行い、それを報告、公表すべきとしているのだ。
 ユニオンとしては、
①今回の報告書をオーナーさんが店舗担当者や本社幹部との現場でのやりとりに活用できるよう、パンフレットにして、宣伝し、各地で活用のための学習会を開催したい。
②各コンビニ本部に、独占禁止法違反行為の根絶を要求して、要求書提出、本部抗議行動を11月中を目処に計画したい。
③本部社員の就業規則に独占禁止法に違反する行為を行った社員は懲戒処分の対象とする規定を入れさせるようユニオンとして団体交渉で要求する。
④パンフレットを武器に独占禁止法違反の行為摘発運動を、全国の店舗オーナーに呼び掛けて展開し、法違反があれば弁護士や社労士などの力もかりて効果的に公取委に申告を行うことで厳正な処分と改善をさせる。
⑤独占禁止法行為の根絶を実現するため、24時間強制、ドミナント、仕入れ強制、募集時の情報全面開示を求めて、各本部とのの集団協議を追求する
 など闘争方針を強化することで、本部とオーナーとの対等な関係、諸問題の解決のために全力をあげる。
 私たちは、09年見きり販売について排除命令が出されたにも関わらずなにも変えられなかった轍を繰り返したくない。大切なことは公取委がなにかしてくれるわけではありません。報告書を活用して現場で闘うこと。一人のオーナーと本部とでは圧倒的な力関係のギャップがあります。そもそもオーナー個人では本部の「優越的地位の濫用」には立ち向かうのは難しいです。必要なのは団結であり、連帯であり、オーナーの横のつながりです。報告書を武器にコンビニモデルの変革を実現しましょう!ユニオンは闘います。

(以上)