松本オーナーが準備書面でセブンの嘘を暴く!

松本オーナーが準備書面でセブンの嘘を暴く!

2020年11月3日 0 投稿者: konbiniworker

令和2年(ワ)第341号建物引渡等請求事件(第1事件)

令和2年(ワ)第1187号契約上の地位確認等請求事件(第2事件)

原告(第2事件被告)株式会社セブン-イレブン・ジャパン

被告(第2事件原告)松本実敏

2020〔令和2〕年10月23日

準備書面1

-時系列に沿った事実関係の整理-

大阪地方裁判所第25民事部合議1係御中

上記被告(第2事件原告)訴訟代理人

第1 本件では時系列に沿って事実関係を把握することが重要であること~原告の主張する解除事由は口実に過ぎないこと

1 開店以降の約7年間において顧客対応や苦情は問題視されていなかったこと

本件の原告による契約解除の有効性を検討するにあたっては、時系列に沿って事実関係を把握することが特に重要である。

原告は、本件店舗に寄せられていた苦情の問題が、継続的取引契約である本件のフランチャイズ契約を僅か10日間の催告期間しか与えず直ちに解除しなければならない大問題であるかのように主張している。しかしながら、原告は、本件店舗の開店から、時短営業に踏み切った平成31年2月1日までの約7年聞において、被告の顧客対応や寄せられた苦情を問題として、契約解除を示唆することはもちろん強く指導することもなかった。

原告は、被告が時短営業を開始した平成31年2月1日に初めて契約解除に言及した通知を行っている。そして、これについて同年2月7日に持たれた話し合いの席でも、原告担当者は、2月12日までに「24時間をやめるかやめへんかだけ」でも文面をもって返答するように求めていたのであり、この時点でも顧客対応や苦情は重視されていなかった。

その後、被告の時短営業がマスコミ等に報道され、世間の注目を浴びると共に、原告が契約解除を主張していることが批判されるようになる。そして、各新聞社の社説でも「コンビニは24時間営業を見直すべき」、「便利さの裏に過酷労働が」等との指摘が相次ぎ、原告は、平成31年3月11日に、この解除の主張を撤回した。

2 原告が顯客対応に関する証拠を収集した7月や10月には、その事実自体を告げられていないこと

こうして、原告は、被告が社会に問題提起した時短営業については解除の通告を撤回したとの姿勢をとりながら、その一方で、それまで重視していなかった本件店舗への顧客の苦情に着目して、内密に証拠集めを重ねていた。

本件訴訟に原告が提出している調査会社撮影の映像等は、いずれも令和元年7月(甲26)や10月(甲79)に取得されている。真に、顧客対応を問題視し、改善が必要と考えるのであれば、このような出来事を把握した時点ですぐに被告に告げて改善を求めるのが筋である。そうではなく、そのような映像資料等取得しながらも被告に告げずにいたのは、既に決めていた解除方針に基づき、証拠集めをすることが目的であったからに他ならない。

3 本件の解除が令和元年12月31日に強行されたことの意味

被告は、令和元年10月28日に、本件店舗について令和2年1月1日を休業にしたいとの意向を明らかにし、この被告の意向は、マスコミでも報道された。

元日休業を後押しする世論が形成されていく中で、年末を迎えた令和元年12月20日に、原告が持参したのが、甲33号証の「催告兼通知書」である。甲33号証は、被告の「セブンイレブン・イメージを毀損する言動を問題として、「10日以内に」、「破綻した当社と貴殿との間の信頼関係を回復する所用の措置を取ること」を催告し、措置を取らなかった場合には、「令和元年12月31日をもって加盟店契約が解除となること」を通知するものであった。

原告が、年末の押し迫ったタイミングで、僅か10日以内との極めて短い催告期間を設定して、慌ただしく契約解除を告げてきているのは、本件店舗の元日休業の行方について、マスコミや世論の関心が集まっていたために他ならない。

原告は、この催告兼通知書において、自らが精査していた平成31年4月から令和元年10月までの間に発生した顧客トラブルにっいて、初めて被告に告げた上に、その詳細な資料を共有することもなく、また、被告からの、せめて1か月程度は改善に向けた取り組みを見て欲しいとの要望にも応じずに、頑なに、契約解除を推し進めている。

開店直後からの約7年弱もの期聞において、原告が、被告の顧客対応を理由に解除を示唆するような言動を取ったことがなかったことや、平成31年に入ってから、自ら証拠収集した顯客トラブルについても、被告に具体的に告げることもせずにそのままにしていたにもかかわらず、この12月20日に解除を通知して以降は、僅か10日の期間しか与えずに、また、被告が改善を申し出ているのにも取り合わず、解除を強行しているのであるから、12月31日に解除することへの固執は、異常なほどであった。

本件の加盟店契約は、継続的取引閨係の典型とも言えるコンビニフランチャイズ契約である。そして、これによって生計を立てている被告にとって、本件の契約解除は、生活の糧を直ちに失わせしめることを意味するだけでなく、雇用する従業員らへの責任や、また高額の違約金をも発生させるものである。原告が、このような、重大な契約解除をわずか10日間で強行したのは、元日休業問題で、再び、原告にとって世諭が逆風となる事態を避ける狙いがあった為としか考えられないのである。

このような事実経過に照らせば、本件訴訟で原告の主張する、「セブン・イレブン・イメージを甚だしく傷つけた」等の解除事由は、口実として述べられたに過ぎないことが明らかと言える。

4 小括

本件の原告による解除については、このような全体的な事実経過の中で持つ意味を十分に吟味した評価が不可欠である。被告は、原告の主張する個々の解除事由について、追って詳細に認否反論する予定であるが、それに先立ち、本書面ではまず、本件の契約解除に至るまでの事実関係についてやや詳しく整理して述べることとする。

第2本件の事実経過

1 FC契約締結に至る経緯、事前に受けていた説明

被告は、かつて工務店を経営していたがこれを止め、夫婦で原告のフランチャイズ店経営についての説明会に参加した。説明会では、フランチャイズ店経営についての楽観的な見通しが示され、セブンイレブンのフランチャイズ店経営者(オーナー)は自己の裁量で休日を取ることが可能であり、オーナーの中には、海外旅行に年間に何度も行く人もいる等と、生活に余裕を持って店舗経営を行うことが可能であるとの説明がなされていた。また、オーナーに経営上で困ったことがある場合には、原告のオーナーヘルプ制度が利用できるとも説明されていた。

研修会には、被告と同じような年頃で、フランチャイズ店経営を始めようとするご夫婦も参加されており、交流を図りながら、まずはレジ打ちの仕方といった初歩的なところから一緒に学ぶこととなった。

自宅に近い候補店舗のうち、最も近くの候補地は他のオーナーが先に経営することに決まったため、被告は東大阪市南上小阪8-2所在の本件店舗(東大阪南上小阪店)を経営することと決まった。

平成24年1月5日、被告は、原告との間でフランチャイズ契約を締結した(甲17)。

2 本件店舗の開店からの状況

(1)契約解除を示峻されることなど無かったこと

被告は原告とのフランチャイズ契約に基づき、平成24年2月24日から、本件店舗の経営を開始した。原告は、本停訴訟において、本件店舗では「開店直後からお客様に対する暴言や恫喝に対して多くの苦情が寄せられている」とし、累計で326件の苦情があったことを解除の根拠として強調している(甲23、なお、甲32、33の通知文書では336件となっており件数が異なる)。

しかしながら、開店から平成31年1月までの約7年もの間において、被告が原告から、このような苦情を理由に契約の解除を示唆されたことは無いことはもちろん、強く指導されたこともなかった。本件店舗を来訪した担当のオペレーション・フィールド・カウンセラー(以下「OFC」という)が苦情があったことを報告することが年に何回かあったが、被告が監視カメラの画像を見せるなどしながら事情を説明することで、それ以上に是正を求められるようなこともなかった。それどころか、被告は、平成29年2月には、原告から表彰状を贈呈されてもいる(乙1)。この表彰状には、原告の代表取締役杜長名で、本件店舗の経営が5周年を迎えたことを祝い、「今日まで、貴殿をはじめご家族皆様の日夜たゆまぬご努力とご苦労に深く感謝申し上げる次第でございます。」等と記載されている。

甲23が正しいとすれば、この前月までの間に既に累計138件の苦情が寄せられていた筈であるのに、原告においても、フランチャイズ契約の継続にあたって、これらの苦情が支障になるなどとは何ら考えられていなかったことが明らかと言える。

被告が時短営業に踏み切るまで、本件店舗は、順調に運営されている原告の通常のフランチャイズ店のうちの一つに他ならなかったのである。

(2)経営開始後の状況

被告は本件店舗の開店から3日問で、原告の推奨するnanacoカードの新規会員1000人獲得を達成した。これは西日本の店舗では初めて達成されたものであり、この被告の頑張りは、当時、担当のOFCからも大いに賞賛された。

また、この他にも、被告は東大阪地区内での肉まんの売り上げで上位にランキングされる(1位を獲得したこともあった)など、営業面で熱心な取り組みをしていたフランチャイジーであった。

被告は、開店当時は、東大阪市吉田に居住しながら本件店舗まで通っていた。吉田の自宅から本件店舗までの移動に係る所要時間は、自家用車で約30分、電車だと約1時間を要した。しかし、夫婦が共にほとんどの時間(ほぼ6時から22時)を本件店舗で稼働し、生活の全てが本件店舗の経営と言っても過言ではない状態となっていたことから、少しでも負担を軽減するため平成24年7月には本件店舗のすぐ近くのマンションに転居した。

24時間の営業時間中、各シフト毎にスタッフを2名以上確保するため、常時約18名のアルバイトの獲得や維持に苦労しなければならなかった。平成26年には、正社員1名を雇用することで、シフト管理の負担は多少軽減されたが、その人件費負担は、直接的に被告の利益を圧迫した。

それでも、本件店舗の経営自体は順調であり、経営を開始した平成24年から平成30年までの6年間に、来客数は当初1日あたり800人程度だったものが、1000人から1200人程度にまで増え、売り上げも年間2億2000万から3000万円台を維持していた(乙2)。一般的には開店から5年でも返済しきることが容易でないとされた開業時に原告から受けた融資金(約1000万円)を被告は、4年5ヶ月で完済することができた。

来客数が増え、売り上げが上昇し維持されていることは、本件店舗が地域の顧客の支持を受けていたことの何よりの証拠である。

(3)駐車場の不正利用等に悩まされたこと

経営そのものは軌道に乗せることができた一方で、被告が悩まされたのは、駐車場の使用態様等の顧客のマナーの問題であった、本件店舗の所在地近辺は、地主である塚原氏の陳述書(甲51)にも記載されているように必ずしも治安がよい方ではなく、被告は、深夜まで駐車場にたむろする若者や、近隣店舗等に用がある客の無断駐車、便乗駐車に悩まされることとなった。

近隣(東大阪市近江堂)にあったファミリーマートが、7台の駐康スペースのほとんどを無関係の駐車に占拠され、また、夜には若者の集団が駐車場を我が物顔に利用したことによって一般客の足が遠のき、閉店廃業に追い込まれたという経緯を聞いて、これらの問題がコンピニフランチャイズ店を経営していく上で、共通する深刻な課題であるとの認識を強めていた。

店内に設置されたモニターから確認できる防犯カメラの映像で、同じ車両が長時間同じ場所に停められていることを確認することは容易であった。被告は、迷惑駐車であることを確認の上でドライバーに注意するなどしていたが、注意されたことに立腹したドライバーとの間で口論等となることも多かった。

3 平成30年4月1日からの駐車場有料化

上述のように、被告は、本件店舗への来訪を目的としないにもかかわらず、本件店舗の駐車場を長時間利用する迷惑行為に悩まされていた被告は、迷惑駐車の問題を繰り返し担当のOFCや東大阪地区ディストリクトマネージャーである山本幸弘(以下「山本DM」という)に約2年聞にわたって繰り返し相談していた。

その結果、ようやく原告の稟議が下りて、平成30年4月1日から、本件店舗の駐車場が有料化された。具体的には、駐車車両の駐車開始時からの経過時聞を自動で記録する設備を導入し、ナンバー等が記録されることで、駐車時間が20分を超える場合には発生した駐車料金を精算機で精算しなければならないものとされた。

この有料化が実現したことにより、平成30年4月以降は、それ以前に比べて駐車場の不正使用に関するトラブルは大きく減少した。しかし、原告は、大きく減少した後の平成31年2月以降になってから本件店舗の駐車場使用に関する顧客から苦情を問題視するようになったものである。

4 時短営業

(1)年中無休、24時間営業に苦しんできたこと

原告と被告との間で交わされたフランチャイズ契約では、加盟店は店舗を年中無休で24時間営業する義務があるものとされていた(甲17の基本契約書第23条では「年中無休で、連日少なくとも午前7時から午後11時まで、開店し、営業を行うものとする」となっているが、甲18の加盟店付属契約書の24頁「諸条項の変更」において、「今日の実情に合わせ」として「連日24時間開店」することを定めた第2項が追加されている)。

この年中無休、24時間営業の縛りが、フランチヤイズオーナーにとって重い負担となっており、被告もその例外ではなかった。

(2)被告の妻の逝去

平成30年5月31日、被告の妻である松本倫子(以下「妻」という)が逝去した。膵臓がんが再発したものであった。

妻は、本件店舗の経営を開始した平成24年2月以降、被告と同様に、ほとんど休みを取ることなく、毎日のように本件店舗で働き続けていた。このことが、心身に多大な負担となっていたものと思われる。

膵臓がんが発見されたのは、平成28年7月のことであったが、妻は膵臓がんが発見されて以降も、また、手術をした後も、療養に専念することはできず、抗がん剤治療を受けながらも店舗に立たねばならない状態であった。

平成30年4月頃になり、妻が数値の上でも深刻な状態となり、店舗に立つことは出来ないようになった。前月まではそれでも元気にしていたが、膵臓がんの進行は早いということを改めて痛感した。妻に、最期に行きたいところはないかと尋ねると、妻は、東京の大学に通う息子の暮らしぶりを見たいと言った。そのため、被告は原告にヘルプ制度の利用を打診したが、原告は、急に言われても対応できないとのことで、一週間は待つように指示された。症状の急変があったためであるから、急に言うなと言われても無理なことではあったが、被告は、やむを得ず、1週間は待つこととした。

しかし、その1週間の間に、妻の症状は進行してしまっていた。息子と会うことまでは出来たものの、旅行先で倒れて救急車で運ばれる事態となってしまったのである。すぐにヘルプ制度が利用できていれば、東京で妻が行きたいところにも連れて行ってあげることが出来たのにと、被告は、原告に指示された、この1週間を待ってしまったことを悔いた。

亡くなる直前、被告と妻が、病院の喫茶店で二人でモーニングを食べる機会があった際、妻は「こんなん出来るなんて夢みたい」とつぶやいた。その一言が、被告の胸に深く刺さっている。本件店舗を開店してからの6年余りの間、被告と妻は交代で店に立ち続けたため、夫婦二人で外でゆっくりした時間をとることなど不可能だったためである。

(3)時短営業の決意と表明

被告は、妻の逝去を受けて、命までを奪われる契約に縛られなければならないなどということがあるだろうかという疑問を強く感じるようになった。

妻が膵臓がんの治療等のために店舗に立てる時間が制限され、全くシフトに入れなくなると、たちまち、24時間営業を維持するための人員確保に困難が生じるようになっていた。コンビニフランチャイズ契約は、オーナーとその家族が勤務に入ることによって店舗運営がぎりぎりで支えられている実態があった。

被告は、妻の生前から、原告に深夜時間帯を休業したいと相談し続けていたが、妻が逝去した平成30年5月以降には、より強く、原告に対して、人員不足を理由に深夜時間帯を休業しなければ経営が持たないとの相談を繰り返し行った。しかし、そのたびに、原告の関西地区ゾーンマネージャーである嵐陽一(以下「嵐ZM」という)や、山本DMから、あなたは、24時間営業を行うことを理解して加盟店契約を締結したのだから従わなければならない等と言われるばかりであった。

被告は、平成31年1月に、原告に対して、同年2月1日からは、本件店舗について24時間営業を廃止し、午前1時から6時までの深夜時間帯を休みとする時短営業を開始したいと具体的に告げた。

これに対し、同年1月25日に本件店舗を来訪した被告の山本DMは、「会社の立場としては、よいとは言えない」としつつも「オーナーさんの首根っこつかんで開けろと言うわけにもいかない」「私がオーナーさんの考え全く理解していないわけではない」等と述べていたことから、被告としては、緊急避難的なものとして事実上容認してもらえるか、チャージ率の変更に加えて伺らかのペナルティ等を受けることはあるかも知れないと思いつつも、既に限界であったために時短営業を開始することを決意した。なお、この1月25日に、山本DMは苦情があったことについて被告に報告しているが、その際の姿勢は、被告を責めて改善を求めるというものではなく、被告の説明に理解を示しながら、クレームに対しては、本部としても、オーナーに確認して説明をして、本部としてもこれ以上の対応はできませんという対応をすることになるので、そのことについてオーナーの了承をとっておきたいという従来通りのものであった。

(4)時短営業の実行

被告は、既に24時間営業を続けることに限界を感じていたことから、同年2月1日から時短営業を実施することを決意し、1月25日以降に従業員らに平成31年2月1日から時短営業を実施することを告げ、また、本件店舗入り口にも貼り出した。貼り紙を見た客からは、深夜は休んでもよいから、昼間の営業は続けて下さいねという応援の声が寄せられた。

そして、実際に、同日の午前1時からこれを実行した。

この深夜営業の中止に踏み切った現場には、原告の損当OFCもその様子を見に来ていた。そして「本当に閉めましたね」と言って帰って行った。

(5)コンビニ会計と時短営業

コンビニ会計とも言われるコンビニフランチャイズの特殊な会計方式の下では、時短営業よりも24時間営業をした方が、本部にとって利益がもたらされる。すなわち、コンビニ会計の特徴として、加盟店は契約で売上高から売上原価(廃棄分を除く実際に売れた分だけの商品原価)を差し引いた粗利益の一定割合をロイヤルティー(加盟店料、原借の場合はチャージと呼称している)としてコンビニ本部に支払う。単純に考えて、24時聞営業の方が時短営業に比して売上高は増えるから、24時間営業の方が本部のもうけは大きい。仮に全国の店舗が時短営業に踏み切った場合、本部の売上は一晩で約1億円減ることになるとも言われる。

他方で、加盟店は、残った利益から人件費や光熱費を負担しなければならない。24時聞営業をするためには、深夜の売り上げの少ない時間帯に、割増賃金を負担して人員を確保する必要があり、多くの加盟店にとって、深夜営業は利益を圧迫するものとなっているのが実態である。特に、人件費の高騰により、この負担は大きなものとなっていた。

この構造の下で、本部は24時聞営業を継続させようとし、加盟店は大きな負担に苦しんでいたのである,,

(6)契約解除通知(甲25)

被告が、時短営業を実行した平成31年2月1日当日の17時頃に、原告の山本DMが、本件店舗まで持参したのが、甲25号証の通知書である。この段に至って、初めて、原告は加盟店契約の解除を主張するようになる。

この通知書は「1.営業時間変更について」「2.お客様に対する接客について」と時短営業問題を1番に掲げて重視したものであり、7枚目に記された結論部分でも、「『1』につきましては、加盟店契約違反の是正及び二度と行わないことの誓約を求めると共に、本日以降に再度営業の休止を実施した場合は貴殿との加盟店契約の解除致します。『2』につきましては、加盟店契約違反状態の是正及び二度と行わないことの誓約を求めます。」と記載されており、時短営業を問題視して、契約を解除しようとする原告の意図が明確に表れたものとなっている。

営業時間変更については加盟店契約を即時に解除すると告げながら、接客については、「是正及び二度と行わないことの誓約」を求めるに止まっており、契約解除の主眼が、時短営業にあることは明らかであった。この通知に記載されていたの3件の苦情内容は、2016年(平歳28年)1月27日、2月15日、2月23日に寄せられていたものである。原告は、これらの苦情を受けて約3年も経過してから初めて、このような通知を行ったのであった。

同年2月7日に、被告の地区事務所において嵐ZMおよび山本DMとの話し合いがなされた際にも、嵐ZMは、10日以内(2月12日まで〉に「24時間をやめるかやめへんかだけでも文面をもって返答」するように求めている。なお、この話し合いの際、被告は原告から、契約解除となれば被告は6ヶ月分の売上総利益の50%に相当する約1700万円を支払わなければならないことを示された。

(7)被告からの回答(乙3)

被告は、平成31年2月13日に、原告の嵐ZMに対し、「深夜営業時聞の短縮について」と題して書面による回答を送付している(乙3)。

同書面には、「このままでは、私自身が過労死するか、深夜営業を短縮するか、どちらかしか選択肢がないと判断し、止むにやまれず、後者を選ぶことを山本DMに本年1月25日に伝えました。山本DMは、〔会社側として、決して良いとは言えませんが、オ一ナ一さんの首根っこを捕まえて「24縛間やれ!」ということも言えません]と仰いました。これは、いけないけれども、緊急避難の容認であるという意味に、私は理解いたしました。」や、「私、店長である私の息子、お店の社員の命を守るために、止むにやまれず行っている事です。どうぞご理解ください。又、解決の方法があれば、ご教示くださいます様お願い申し上げます。」等と記されていた。

(8)時短営業に関する報道

平成31年2月19日に、弁護士ドットコムニュースというWEB上のニュースサイトが「セブンオーナー『過労死寸前』で時短営業…『契約解除』『1700万支払い』迫られる?」と題する記事を配信した(乙4)。

この記事が切っ掛けとなり、被告による時短営業の実行は、マスコミが大きく取り上げて報道され、社会的に大きな反響を呼んだ。時短営業をした被告を排除するため、原告が、時短営業は契約違反であるとして加盟店契約の解除を主張していることについて、世間では原告に対する批判の声が高まった。

(9)要望書の提出

被告は、平成31年2月27日、原告の本社を訪れ、原告代表者宛ての「24時間営業短縮営業の選択制に関する要望書」と題する要望書(乙5)を提出した。同書面には、「契約時には昨今の人手不足、または、最低賃金の高騰は予測できない事」であったことなどを理由として、「24時間営業の継続が困難の場合、営業時間の短縮をオーナー自身が選択できるようにすることを要望致します」等と記載されていた。

(10)解除の撤回

このような、被告の時短営業を巡るマスコミ報道がなされ、世間の注目を浴び、原告による契約解除への批判が高まる状況下で、平成31年3月1日には、原告が直営店10店舗で、深夜営業時間短縮の実証実験を行う方針であると報道された。これに対してはフランチャイズ加盟店からの参加要請が相次いだことから、同月5日にはフランチャイズ加盟店も加える意向であると報道された。その後、原告のプレスリリースで、正式に、同年3月21日から直営店10店舗で実施することが発表された(乙6)。

このような報道がなされた平成31年3月3日から10日までの間には、被告の時短営業を敢り上げて、コンビニの24時間営業を見直すべきと述べる各新聞社の社説が相次いで掲載されている(乙7の1ないし4)。

そして、平成31年3月11日には、原告の山本DMが本件店舗を訪れ、原告自体が全店に24時聞営業を強制していることを見直していこうという方向に舵を切ったことを受けて、被告に対しても、契約解除を撤回し、違約金の請求も行わない旨を口頭で伝えたのである。

この、解除の主張を撤回した際に、これを伝えに来た山本DMは、「24時間を止めているからという理由一本で契約解除することは無くなったが、接客の問題であったり従業員さんの雇用の問題のなかで、契約違反にあたるような過度の事があれば、それは当然別の意味であたってくる可能性はゼロとは言えない」と述べている。

その後、4月24日には、公正取引委員会の事務総長定例会見で、山田昭典事務総長(当時)は、コンビニエンスストアの24時間営業の強制が、独占禁止法の適用対象となる可能性について質問を受け、「それぞれの個別の事情に応じてその判断をせざるを得ない部分があるかと思いますので、24時間営業を本部が決めているからということで、一概に独占禁止法上の問題になるというものではないというふうに理解しておりますが、その一方で、契約期間中に事業環境が大きく変化したことに伴って、取引の相手方が、この場合には、オーナー側ということになると思いますけれども、優越的地位にある者に対して、契約内容の見直しを求めたにもかかわらず、その優越的地位にある者が見蔵しを一方的に拒絶することが、独占禁止法に規定します優越的地位の濫用の一つの形態であります『取引の相手方に不利益となるように取引を実施すること』それに該当するというような場合には、独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たるということになります。ですから、そうした可能性は排除はされないというふうに思います。」と答えている(乙8)。

5 ドミナント出店の画策

こうして、表面上は、原告も被告の時短営業を了承したように見せながら、原告は、その一方で、令和元年6月3日頃には、本件店舗近隣に別のセブンイレブン店舗を出店させようと、対象となる土地探しに取り組んでいた。

原告は、ドミナント戦略と呼ばれる、同一の地域に集中的に複数の店舗を出店させる出店戦略を採用していることが知られている。集中的に出店することで、その地域における支配的なチェーン店となり、他店の新規参入を困難とし、知名度向上や広告宣伝費の削減に結びつく他、一度に回ることができることによって商品配送時の物流コストやOFC訪問等の店舗運営コストが削減できる等のメリットがあるとされる。

他方で、このドミナント戦略は、本部にとって大きなメリットがある一方で、加盟店にとっては、同じ客を奪い合うこととなり、加盟店毎の利益が減少してしまうことや、同様にアルバイト等の人材も奪い合うこととなって、人手不足を加速するという深刻なデメリットがある。

原告は、多数のフランチャイズ加盟店を管理統制するため、気に入らない態度をとる既存加盟店の近隣に、直営店や新たなフランチャイズ加盟店を出店させ、自ら利益を確保しながら既存加盟店を疲弊させるという手段をとることがあると指摘されている。時短営業を実施した本件店舗は、まさに、原告にとって気に入らない態度をとる加盟店であったと考えられる。

原告が、令和元年6月初めに、本件店舗の近隣で新たな店舗を出店するための土地探しをしていたことは、新規店舗の出店によって、被告を経済的に疲弊させることを意図したものと推測されるのである。但し、結局は、敷地の提供に応じてくれる地主は現れなかったようである。

6 原告による証拠集めがなされていたこと

原告は、世論を意識して、時短営業を理由とした契約解除は撤回したものの、被告を排除するために、それまで重視していなかった本件店舗への顧客の苦情に着目して、内密に証拠集めを重ねていた。本件訴訟に原告が提出している調査会社撮影の映像等は、本件店舗向かい側の建物から撮影されたものである。撮影場所となる居室を原告の費用負担で賃借しており、長期聞、複数名の人員を確保してなされたもので、相当な費用と時間をかけて証拠集めをしていたことが伺われる。

これらの映像等は、いずれも令和元年7月(甲26)や10月(甲79)に取得されている。真に、原告店舗のイメージを重視し、被告の顯客対応を問題視して、改善を求めるのであれば、このような出来事があった時点ですぐに被告に告げて改善を求めるのが筋である。しかし、いずれの出来事についても、令和元年12月20日に手渡された甲33号証の催告兼通知書に記載されているのを見るまで、被告に告げられることはなかった。

7 日曜休業をめぐるやりとり

(1)日曜休業の要望

令和元年8月に、被告は日曜日を休業日とすることを了解して欲しいとの希望を原告に伝えた。

これは、店長として人員不足分を広くカバーしてくれていた被告の長男が、同年8月末までで辞めざるをえなくなったことが切っ掛けであった。本件店舗では、何故か、令和元年7月にこれまでには無かったような顧客による挑発的な言動が極端に目立つようになっていた(甲23でも令和元年7月は苦情が極端に多い)。

被告の長男は、シフトをカバーするための長時間勤務に加えて、そのような挑発的な言動をする顧客への対応に心身をすり減らしてしまっていた。被告としては、慰留したいところであったが、長男のそのような様子を見て、自死の危険さえも感じるほどであったから、辞めることもやむを得ないと受けとめた。

被告は、長男が辞めた後のシフトをどのように組むかを様々に検討した。

その結果、どんなに自分が頑張って連日長時間入ることとしたとしても、あるいは一日の営業時間をさらに短くしたとしても、シフトを組むためには9月1日から日曜を休業日とすることが避けられないと考えて出したのが日曜休業という結論であった。

被告は、令和元年8月22日に、この結論を山本DMを通じて原告に伝えた。

(2)原告の回答

これに対し、原告は、同月23日付の代表取締役名の内容証明郵便によって回答した(乙9)。その内容は、「いままで貴殿の深夜休業の意思を尊重し、貴殿とのコミゴニケーションを深め、契約違反状態を解消するべく努力してまいりました。しかしながら当杜は、貴殿が深夜時間帯(午後11時~午前7時)以外の時間帯に休業し、閉店することには合意する意思はありません。あくまでも貴殿が、当杜の提案を聞き入れず、予告どおり深夜時間帯以外の時間帯の休業に踏み切った場合は、貴殿が加盟店契約を遵守し、当社との信頼関係を修復する意思もないと判断せざるを得ませんので、深夜時間帯以外の休業を行った時点をもって貴殿との加盟店契約を解除します。貴殿には改めてご再考頂きますよう重ねてお願い申しあげます。」として、深夜時間帯以外の休業は絶対に認めず、その時点で解除する旨を告げる回答であった。

(3)被告による撤回

この日曜休業については、原告の回答から数日後の同年8月27日に、原告の渡邊良男取締役執行役員が本件店舗を訪れ、直接、被告に対するヒアリングを実施した際に、被告から今回は日曜休業を実行しないことを約束した(甲42)。

被告は、渡邊氏のヒアリングに対し、人手不足の問題がコンビニ業界金体に生じていること、その中で、年中無休24時間営業のための本部の圧力がすごくて、自殺してしまう人や過労で亡くなったという人が後を絶たないこと、オーナーヘルプ制度は一時的な助けになるが根本的な助けにはならないこと、人手不足というのは人が不足しているという問題だけではなくて、不足している人を補うための資金が不足していることでもあるのを分かってもらいたい等と加盟店オーナーらの置かれた窮状を訴えている。そして、「とりあえず日曜日は今回人が来てくれたので、閉めませんが今後本部の改善がみられないようであれば、閉める可能性もあります。「他のお店含め今後どうしようも無くなれば、今回のようになってしまいますよと知って下さい。なんとか改善してもらいたい」として、この時点で日曜休業に踏み切ることは撤回しながらも、原告の役員に対して、直接、窮状を訴え、原告に強く改善を求めたのである。

なお、この際のやりとりにおいて、渡邊氏は、被告の顧客対応についても触れてはいるが、「現場の人間たちが、オーナーさんに、多分今年入ってからなんですかね、繰り返し、繰り返し申し上げてた、例えば、固定客に対しての応対の問題ですとか」(甲42、7頁)として、お客さんからの苦情等について原告が問題視し始めたのは、この年(平成31年・令和元年)に入ってからであることを認めている。渡邊氏は、このとき、クレームについては客観的に判断するための事実確認を改めてすること等を約束しているが、この点を理由にした加盟店契約の解除には何ら言及していない。

8 契約条項の見直し、改訂を求める通知

被告は、上述のように、日曜休業に踏み切ることは撒回したものの、原告に、背景となる人手不足等に起因するコンビニ加盟店オーナーの窮状を訴え、契約条項の見直し等の改善を求めていた。

そもそも、原告と被告を含む加盟店オーナーとの聞のフランチャイズ基本契約(甲17)には、次の規定があった。

「第57条(改訂)

甲は、この契約の各条項に規定される数額が、社会・経済情勢の急激な変動または物価変動の継続による価格体系の変化などにより、合理性を失うに至った場合には、均衡の実質を維持するため、改訂することができるものとし、そのため、この基準値が定められた昭和54年10月1日から5カ年間経過することに、乙の意見をきいたうえ、見直しをするものとする。」

被告は、このようにフランチャイズ基本契約にも社会・経済情勢の急激な変動等によって合理性を失うに至った場合には、加盟店側の意見を聞いた上で見直しをすることが謳われているのであるから、昨今の急激な社会構造の変化による人手不足等の問題によって、年中無休24時間営業という営業時間のあり方についても、加盟店側の意見を聞いた上で、見直しがなされるべきであると考えた。

そこで、原告に対し、その旨を記載した、令和元年9月11日付けの要求書(乙10)および同年10月3日付けの要求書(乙11)を送付した。

しかし、原告がこの点に関する被告との話し合いの場を設定することはなかった。

9 元日休業をめぐるやりとり

被告は、このような経過がある中で、年に一度、元日くらいは休業とする選択肢が加盟店オーナーに認められてもよいのではないかと考えるようになっていた。そして、被告は、元日休業について同業者らに問題提起し、これが報道されると、再び、コンビニ加盟店契約のあり方について世間の注目が集まると共に、元日くらい休業が認められるべきではないかとの共感が消費者の間にも広がりを見せた。

令和元年10月9日には、大手コンビニチェーン店の一つであるローソンが、令和2年元日には、加盟店100店舗程度で元日休業を実験的に行うことを発表した。

被告は、令和元年10月28日に、本件店舗について令和2年1月1日を休業にしたいとの意向を明らかにし、この被告の意向は、マスコミでも報道された(乙12)。被告は、日曜休業には踏み切らず、自らが多大な時間を充てることで休業日のない状態で本件店舗の営業を続けていた。しかし、その間、原告の本部側で、このような加盟店オーナーの窮状を改善するための取り組みは一向に進展しなかった。そこで、再び、役員である渡邊氏に伝えていたとおりに、改善が見られない中で、加盟店オーナーのおかれている現状の問題性を訴えるため、元日休業を認めるよう、強くアピールしたのである。

令和元年の年末には、このような、コンビニエンスストアの元日休業を後押しする世論が形成されており、本件店舗の動向についても注目が集まつていた。

10 原告による契約解除の強行

(1)催告兼通知書(甲32,33)

このような、元日休業を後押しする世論が形成されていく中で、年末を迎えた令和元年12月20日に、被告が持参したのが、甲33号証の「催告兼通知書」である。

甲33号証は、被告の「セブンイレブン・イメージを毀損する言動を問題として、「10日以内に」、「破綻した当社と貴殿との間の信頼関孫を回復する所用の措置を取ること」を催告し、措置を取らなかった場合には、「令和元年12月31日をもって加盟店契約が解除となること」を通知するものであった。

原告は、この催告兼通知書において、自らが調査していた平成31年4月から令和元年10月までの間に発生した顧客トラブルについて、初めて被告に告げている。

この際のやりとりにおいて、原告担当者や原告代理人弁護士は、「12月30日の23時をもって契約を解除する」「31日はもう解除ですから」「解除ですからね」等と述べて、12月31日迄には解除する強い意向を示している(甲34の27,36,37頁)。被告から、わずか10日間の催告期間は短すぎるのではないかという当然の疑問を呈されても、原告代理人弁議士は契約ですから」「契約書に書いてあるんでね」等と述べて、全く聞く耳を持っていない(甲34の38,39頁)。

被告が、「これ、何で、今、来たの?…ひょっとしたら、1日に休まれんのが。」と述べかけるや、即座に、山本DMや嵐ZMは「いえいえ、そんなことは全然違いますよ。」「いえ、違います。違う」と否定しているが、違うと言える理由は全く示されていない(甲34の39頁)。

被告が、そうであれば、1か月余裕をもらいたいと述べると、原告代理人弁護士は、理由も述べることなく「いや、できないす。申し訳ない。」と断じている(甲34の40頁)。そこで、改めて被告から「何で、じゃあ、今になってこれが来たの?」と問うと、原告代理人弁議士は、「夏ぐらいとかに相談を受けた」と認めつつ、それから5か月近くが経過した12月20日になって通知していることについてはセブンペイの問題や労基の問題が出て「会社の経営資源が全部、そっちに渡っちゃうんですよ」「それがやっと」「松本オーナーとやっと時間ができた」などと、全く理由にならない理由を述べるに止まっている。

夏には弁護士に相談するほどの状態だったのであるから、真に急を要する事態なのであれば、5か月も無為に過ぎさせることなく対応されたはずである。それが、5か月も経っているのは、被告に信頼関係の回復を求める催告期聞をわずか10日しか設定できないほどに急を要する事態とは捉えられていなかったことの表れであろう。5か月も経過した後に通知しておきながら、被告から、1か月欲しいと言われて、全く期間の延長に応じようともせず、頑なに10日での解除を強行する姿勢は極めて不合理である。

(2)令和元年12月20日の取材対応

原告は、この12月20日の面談終了後、被告が、事務所ドア外側に待機していた報道機関の記者らに「正月1日にやっぱり休んでもらうとまずいということでしょうね」と発言したことについて、「催告兼通知書の記載内容に反する虚偽を発信したもので、原告との信頼関係を回復するための十分な措置を講じる意思がないことを露わにした」などと非難している。

しかしながら、(1)で述べたとおり、原告が12月30日や31日中の解除に固執していたことは明白なのであり、その通知がわずか10日前の12月20日になってなされた理由や1か月の余裕を与えることも出来ない理由についてもなんら合理的に説明できていないのであるから、このような原告の対応を見た被告が、「正月1日にやっぱり休んでもらうとまずいということでしょうね」という感想を抱くのはむしろ当然であって、なんら虚偽を発信したものではない。

また、実際に、この日に被告が契約解除の通知を受けた事については、元日休業を検討していた他のコンビニオーナー達にも「見せしめだ」と受け止められ、元日休業の実施を萎縮させる効果が生じていた(乙13)。

(3)被告からの手紙(甲35)

被告は、この僅か10日間の間に、まずは自らの契約継続の意思を原告に伝える必要があると考え、令和元年12月24日付けで原告代表者宛ての手紙を作成、送付した(甲36)。

この手紙において、被告は、「今後は貴殿及び貴社の社員ともしっかりと意思疎通を図り、ご指摘も受け止めながら、お客様からクレームを頂かないように、言葉使いや態度も改善に向けて努力して参る所存あることを表明します。」「貴社社員とも真剣に相談し意思の疎通を図りながら、またお客様のご理解を得るための対応を強め、同時に、オーナー、従業員の言葉使いや態度についても改善工夫に努めたいと決意しております。」等と記載している。

(4)被告による誓約書の提出や代理人を通じた協議

令和元年12月29日には、被告が依頼した中野勝志弁護士の同席の下で、再び原告側との面談が持たれ、被告からは、中野弁護士の回答書(甲37)および被告が改善を約束した誓約書(甲38)が提出されている。

この席で、中野弁護士は極めて冷静に、「だから12月31日というのはなんとかならないかというふうに思っているわけですよ。例えぱもう一度見てもらって、半年後とかにやっぱり解除でしょうというんだったらそれは分からんでもないんですけど、10日でというのはさすがに厳しいんじゃないかと。」等として相当な是正期間が設けられるべきと指摘したのに対し、原告は、2月や8月にも警告していた、ウォーニング出していた等と回答している(甲47の14~17頁)。

しかし、前述のように、2月の契約解除通知(甲25)は、時短営業を問題視したものであったことが明らかであり、また8月の渡邊氏との面談の際には、契約解除は問題となっていなかった(甲42)。

中野弁護士は、改めて、「10日で31日とは言わず、猶予期間延ばしてもらえませんかって、それは検討していただけないんですかね」と申し入れているが、原告は、全くこれには応じようとせず、被告の経営が元日まで継続することを頑なに受け容れようとはしなかった(甲47の27)。

(5)原告の頑なな姿勢

このように、原告は、解除の理由と主張している苦情の内容等について、資料を共有することもなく、また、被告からの、せめて1か月程度は改善に向けた取り組みを見て欲しいとの要望にも応じずに、頑なに、契約解除を推し進めている。

開店直後からの約7年弱もの期問において、原告が、被告の顧客対応を理由に解除を示唆するような言動を取ったことがなかったことや、平成31年に入ってから、自ら証拠収集した顧客トラブルについても、被告に具体的に告げることもせずにそのままにしていたにもかかわらず、この12月20日に解除を通知して以降は、僅か10日の期間しか与えずに、また、被告が改善を申し出ているのにも取り合わず、解除を強行しているのであるから、12月31日に解除することに固執していたことが明らかである。

僅か1か月程度の期間を見ることもなく、継続的取引関孫の典型とも言えるコンビニフランチャイズ契約の解除を強行したのは、元日休業問題で、再び、原告にとって世論が逆風となる事を避ける狙いがあった為としか考えられないものであった。

11 原告によるアカウント停止の強行

そして、実際に、令和元年12月31日に、原告は本件店舗のアカウントを停止した。新たな商品の搬入もなされなくなり、被告は、やむを得ず令和2年1月8日をもって、本件店舗の営業を休止した。

これまで、約8年もの間、毎日のように本件店舗を利用していた近隣住民も、本件店舗を利用することが出来なくなってしまっている。本部に意見を述べ、異を唱えた加盟店オーナーの生計の術を途絶えさせることを意味する、セブンイレブン本部の強行した一方的なアカウント停止や商品発送の停止という態度こそ近隣住民らへのフレンドリーサービスからかけ離れたものである。

第3まとめ

年中無休24時間営業の縛りに風穴を空けた被告の言動は、世間の注目を集め、公正取引委員会の動きもあって、コンビニ業界に大きな変化をもたらした。

原告は、自社に世諭による非難の矛先が向かうリスクを回避し、利益構造を守るために、時短営業を問題視した解除通知自体は撒回しながらも、被告を排除しようとする意向を固めていたものと思われる。それ故、平成31年2月以降に、それまでは特に問題視していなかった本件店舗への顧客の苦情に着目して、内密に相当な費用と時間をかけて証拠集めを重ねたのである。

その上で、元日休業問題で、再び、原告にとって世論が逆風となる事態が生じかけてきたことから、この懸念されたリスクが現実化することをどうしても避けるために、加盟店契約の解除という重大な契約解除について、慎重に相当な催告期間を設けることすらせずに、頑なな姿勢で強行したものに他ならない。

このような事実経過に照らせば、本件訴訟で原告の主張する、「セブン-イレブン・イメージを甚だしく傷つけた」等の解除事由は、口実として述べられたに過ぎないものであることが明らかである。

以上