人事制度改定は、首切りと賃下げの攻撃だ!
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人事制度改定は、首切りと賃下げの攻撃だ!
本人同意抜きの就業規則=賃金既定のだまし討ち
就業規則=賃金改定を労働者代表選挙の争点から隠し通す破廉恥さ!
1月24日の団体交渉は、人事制度改定をめぐって組合側と会社が激しく激突した。
今回の人事制度改定については、次のような大問題がある。
◆「8割の社員は賃金があがる」は大嘘!
第一に、セブン創業以来、50年続けてきた「安定した生活を維持するには優れた仕組み」であった「年功序列、終身雇用」型の人事制度を廃止する大激変だということだ。社員にとっては、「安定した生活を維持する」ことは保証されないということだ。
首切りや賃下げが頻発し、きわめて不安定な雇用環境に変化させられるということだ。Eラーニングでは明確にそのように説明している。
新制度では、「能力、スキル」を重視し「個人の活躍・成果に対して処遇する」「役割の定義を明確に」した人事制度に変えるというのだが、「能力、スキル」や「個人の活躍・成果」を会社幹部から認められない、もしくは「明確に定義された役割」を達成できていないと評価された社員は、低く処遇されることとなるのは明白ではないか。
1月24日の団体交渉でも、人事労務部は新制度の全貌を明らかにすることを避けたが、「現在の社員の8割は賃金があがるが、1割は現状維持、1割は下がる」と回答し、8900人の現社員の1割、すなわち900人近くは明白に賃下げになるということを明言した。しかし、この回答を仮に額面通りに受け取ったとしても、それは今年5月の新給与通知の時点での話に過ぎず、その後どうなるかの保証は何もない。
交渉で、「M、E、Lの三層に区分するというが、それぞれの層に想定れる社員数を明らかにせよ」と迫ったところ、「Mは800人」「Eは当初は二桁、今後増やしていく」「Lは7000人」と、E層については非常に曖昧な言い方をしてごまかしたが、現状の社員で直ちにエキスパートと評価されるのは、「2桁」(10人から99人)」に過ぎない。今後増やしていくいうことは、当初エキスパートと評価されなかった社員は、「学び直し」をして、新たなスキル・能力をつけたと評価された社員だけがEとされ、評価されなかった社員は脱落させられるということだ。「8割は賃金が上がる」と説明ているが、交渉で、「M、E、Lのそれぞれの層に予定している総額人件費を明らかにせよ」と迫ったが、「開示しない」と回答を拒否した。要するに、「8割は上がる」などと言っても何の根拠も保証もないのだ。「幹部の説明を信じろ」というだけのことで、後で「話が違う」と言っても、「約束したわけではない」「あなたにスキルがなかったから」と言われるのがオチだ。
しかも、ユニオン現下の物価高に見合った賃金にしないと実質賃下げで生活できない、一律に30%の実質賃上げを保障しろ」と迫っても、「賃上げはしたいが、一律ではなく、その社員の評価も加味して」と、物価上昇に見合った一律賃上げを約束することはなかったので、仮に新制度において「賃金があがる」資格に移行できたとしても、実質的には大幅賃下げにることは不可避だ。
会社の言うとおりに「8割の社員は賃金があがる」かというとそんな保証はないし、現状維持の社員もいつまで現状維持なのかはなんの保証もない。
(2)退職金、企業年金さえ廃止して、首切り自由の雇用への転換狙う
新人事制度の本当の狙いを見抜くことが重要だ。その場合、重要なのは、岸田政権がニューヨーク証券取引所で昨年9月に「ジョブ型への移行を促すため、来春までに官民で指針をつくることをめざす」と表明し、ジョブ型雇用を導入する企業が徐々に増えており、セブンの新人事制度も「役割を定義する」とジョブ型雇用の導入を意図していることだ。岸田は、施政方針演説でも「リスキリング(学び直し)による能力向上支援、日本型の職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めるという三位一体の労働市場改革を」と叫んでいる。
週刊ポスト2023年2月24日号で、森永卓郎氏は、ジョブ型雇用の本当の狙いを次のように言っている。「企業が中高年社員のクビ切りや賃下げをしやすくして、退職金や企業年金も縮小し、なくしていこうということです」
セブンの人事制度改定案の末尾に「企業年金給付額の減額についての同意書」へのサインが迫られていたことを皆さんお気づきだろうが、セブン首脳部と財界の狙いはここにある。「退職金」と「企業年金」は、「後払い賃金」と呼ばれ、同じ会社で長く勤続するほど金額は大きくなり、受け取る時に税制上の優遇措置もある。これが日本企業の「終身雇用」を支えてきた本丸といえる。政府税制調査会では、退職金への優遇税制は、「転職をためらう要因にもなりかねない」「人が移動しやすくなる税制にすべきだ」と見直そうとしている。
森永氏が語る。「退職金は年々凄い勢いで減り、大卒社員の退職金平均額はこの20年で1000万円以上も下がっている。今後は一般サラリーマンの退職金は完全になくしていく方向です。」(週刊ポスト2023年2月24日号より)
5月の賃金改定で、一部には賃金が上がる社員がいたとしても、それで「8割の社員は賃金が上がる」という会社の説明を信じていたらとんでもないことになる。狙いは、中高年の首切りや賃下げをやりやすくするということだ。
これまでだと、退職金を上乗せ早期退職募集して首切りするしかなかった。しかしジョブ型雇用に転換すれば、役割を定義された仕事を達成できない社員は不必要、仕事自身がなくなれば雇用も打ち切りとなる仕組みなのだ。もちろん、退職金や企業年金を必要もなくなる。
「安定した生活を維持するには適していた制度を廃止」するというのはそういうことだ。
(3)就業規則変更による不利益変更は「合理性」が必要
さらに第三には、導入の仕方が、「騙し」だということだ。
本来、労働条件の柱である給与や退職金の不利益変更は、本人同意がなければできないと労働契約法に定められている。
しかし、セブンのやり方は、人事制度の改正の全貌も本当の狙いも隠したまま、就業規則の変更だけで賃金規定を変える「騙しのテクニック」を使っている。
セブンが昨年9月の役員会で人事制度の改定を決議したとき、それが社員にどんな影響があるか知らされることはなかった。セブンイレブンには過半数労働組合がないので、それを良いことに、セブンは人事制度改定=労働条件の不利益変更を社員に説明しなかった。しないまま、12月末からはじまった労働者代表選挙の目的には、時間外労働の協定締結ということとあわせて、こっそり「賃金規定の改定」「就業規則の改正」を忍び込ませた。この時点ではどのように就業規則=賃金規定を変えるのか、一切明らかにされなかった。
人事制度改定がEラーニングで説明されはじめた段階では、労働者代表選挙は終わっており、労働者代表となった者の多くは、これまでどおり、「意見は特にありません」と書けばいいだけのことと思い込んでいた。
しかし、3月15日に改定された就業規則が労基署に届け出され、受理されれば、人事制度改定は制度としてほぼ確定したことになる。
団体交渉で人事労務部GM藤本氏、「人事制度改定はすでに決定すみです」と言い放った。「労働契約法に基づき本人同意が必要だ」と主張する組合に対して、「就業規則を変えたのでその必要はありません」「選出された労働者代表の意見表明もしてもらったので成立しています。」と言うのだ。
組合は、労働者代表選挙が始まる前の昨年12月13日の団体交渉で、「労働者代表選挙の目的を明らかにしてから投票をせよ」と迫っていた。時間外労働の労使協定、就業規則改正
会社側の案を社員に周知したうえで選挙をやるべき、そうでなければ、社員は自分の投票にって労働条件がどう変わる知らないまま、判断する材料もまま代表を選んでしまうことになる、と強く要求していた。会社は、協定や規則の内容は「選出された労働者代表とのコミュニケーションの問題」として、人事制度改定にあわせた就業規則改定が意図していることを隠し続けた。
こうして、5月になって社員一人一人に、自分の賃金がどう変わるか明らかになるまえに、3月段階で就業規則変更という騙しの手続きで、社員の賃金は激変させられており、同意も不同意も表明するチャンスすら奪われるという事態になったのだ。
(4)闘いはこれからだ!人事制度改定を破綻に追い込もう!
組合は、法的手段も含めて、「騙しのテクニック」での賃金改定、退職金改定、企業年金給付減額を告発して闘う決意だ。
会社がこのように悪辣だし、もう決まったことだからあきらめるしかない、ということではない。就業規則の変更による労働条件の不利益変更は、①就業規則の変更が合理的なものであること、②変更後の就業規則を労働者に周知させることの2つの要件が必要とされ、「合理的か否か」は、「ア.労働者の受ける不利益の程度、イ.労働条件の変更の必要性、ウ.変更後の就業規則の内容の相当性、エ.労働組合等との交渉の状況、オ.その他の就業規則の変更にかかる事情」によって判断されます(労働契約法10条)。
賃金や退職金の減額については、よほどの事情がない限り、労働契約法10条でいうところの「合理的なもの」とは認められない可能性があります。
「騙しのテクニック」で導入したとしても、社員の受ける不利益が大きい場合、争って撤回させることも不可能とは言えません。
大きく賃金が下がったり、住宅ローン返済や子どもの学費などに組み込まれている退職金の厳格という大きな変更には泣き寝入りせずに、同意できないと怒りの声をあげ、その声が大きくして、覆さなければ社員の生活を守ることはできません。
(5)ブラック企業セブンに勝利したぞ!
ユニオンは、長野県労働委員会でセブンの不当労働行為(団体交渉拒否、降格減給処分)についての救済命令かちとった。
すでに信濃毎日はじめメディアで大きく報じられたように、2019年7月5日に、セブンが24時間営業は団体交渉事項ではないとして予定していた団体交渉を拒否した事件と、セブンに対して24時間営業義務化の廃止、長時間労働の是正を求めた闘ったことを理由にして、セブンがユニオン委員長河野に対して2回の降格減給処分を行ったこと事件に対して、長野県労働委員会は、一部を除き、不当労働行為と認定、交渉に応じることと、降格減給の撤回、不利益の回復を求める命令を発した。ユニオンの側の95%の勝利である。
セブンの体質は、社員が人間らしい働き方、生活を守るために、声をあげ、組合に結集して闘うことにたいして、実に陰湿な手段を使って、本人をつぶすことで、会社の法令違反、権利侵害を居直るものであったが、勇気をもって、つぶし攻撃に屈せず戦い抜くならば、セブンの違法体質、パワハラ体質が明らかになり、むしろセブンの側が不当労働行為の責任を負わざるを得なくなるものであることを事実をもって証明できた。
河野委員長も、ユニオンも、この命令を武器に、セブンのブラック体質の改革をめざし、さらにはコンビニ業界の変革をめざして戦いぬく決意である。
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